富士見市/繭玉飾りと織物業

●難波田城公園 旧金子家住宅/埼玉県富士見市下南畑568-1


繭玉飾りをしているということで見てきました。
公園内に保存されている旧金子家住宅(明治4年建築)に飾ってあったが、油商を営んでいた家で養蚕はしていなかった。


「小正月のマユ玉ダンゴ」の説明によると、
マユ玉ダンゴは14日に柳や梅などの木の枝にダンゴを刺して飾ったもので、ダンゴサシともよばれます。ダンゴは蚕のマユ、里芋、サツマイモなどの形に似せて作ります。
枝に刺したダンゴは、年神様やカマドの神様、井戸神様、稲荷様など家中の神様にお供えします。

地域のボランティアさんたちが旧暦で実施しているそうです。
食紅でピンクにしてあるのもあり、イモの形があったりが特徴的だけど、どうも桜の枝みたいですね。
「家中の神様にお供えする」というのは各地でもやっていたそうだ。(参考で下記)


説明をしてくれた市民学芸員(ボランティア)さんによると、この日の朝に「カマドで蒸して、杵でついて、丸めて・・・」「えっ、杵でついてって餅ですか?」、なんと米粉のダンゴではないらしい。
おすそ分けのダンゴ販売もあって、一緒に試食させてもらったら、なるほど餅だった。桜に餅ですかー、豪勢な(笑)
この市域は河岸段丘(ハケ)の上下に分かれていて、この公園があるのはハケ下の稲作地帯だったからかも。ハケ上の畑作地では養蚕もやっていたらしい。


長屋門には、高機などの道具も展示されていた。
「富士見の織物業」の説明によると、
明治時代末から大正時代にかけて、織物業は富士見市域を含む川越・上福岡・志木一帯の地域産業の一つでした。主に木綿織・絹綿交織(けんめんこうしょく)が生産されました。当時、鶴瀬村4戸、水谷村3~5戸、南畑村1~2戸が織物業(機屋)を営んでいました。
機屋では住み込みや通いの織り子を雇っていたほか、近隣の農家の女性にも出機(でばた)を頼んでいました。糸を渡して自宅の織機で織り上げてもらう出機は、農家にとっては「賃機(ちんばた)」といい、農閑期の重要な副業でした。

資料館の学芸員さんによると、それほど主要な産業としてあったわけでもなく、いろんな仕事があったうちのひとつくらいですね、とのこと。


かつて資料館で企画された着物の図録があって、なかなか面白い。野良着や普段着の調査をして収蔵されたそうだ。
そういう取り組みは少ないと思うので、意外と貴重な記録かも。(図録300円)

 

▼「枝に刺したダンゴは家中の神様にお供えする」について。
多摩地区では普通にやっていたようです。
たまたま抜き書きしてあったものから拾ってみました。

●柴崎では、繭玉大小一六個を樫の木に刺す。この繭玉は、蔵、神棚、台所の荒神様、ダイジンク様、(この供える所は家によって少々異なる)などに上げる。(立川市史)
●小枝にもさして、神棚、仏壇、便所、納屋、地神祭、家神、その他家の由緒ある所に飾るのである。(奥多摩郷土史小誌)
●小さな枝につけたまゆ玉は、床の間、大神宮さま、荒神さま、仏壇,井戸などに飾る。便所にも飾る。これは子供がけがをしないようにするのだという。(青梅市の民俗 第2分冊)
●河辺で作ったまゆ玉もほぼ前述のようなものだが、いろんな神棚を飾るのは,枝が三股になったものに3個ずつさした。(同上)
●これとは別に正月にオソナへを供した神棚へは同じ木にダンゴの小玉を三~七個さして飾る。(福生市文化財報告書 福生の民俗-年中行事-)
●小さい三つ又の枝に、三つの繭玉をさしものを作り、仏壇、神棚、蔵、屋敷神にあげる。(羽村市史資料編 民俗)
●東浅川町の滝本宅では枝先が三つ又になっている梅の木の枝を用意して、その枝先に団子を一個ずつ差す。計三個つけ、神棚、仏壇、荒神、エビス・大黒、稲荷、水神に一つずつ供える。(新八王子市史民俗調査報告書 八王子市南部地域 浅川の民俗)
●一方、一尺ほどの小枝に数個の団子をさしたものは、神棚、仏壇、エビス・大黒様、井戸神様などの家の神や、蔵などの付属屋に供えた。( 同 八王子市西部地域 由木の民俗)
●あるいは一尺くらいの枝木を使って小さいマユダマも作って、神棚や仏壇、荒神、エビス、床の間などにも供えたりしたところもあった。この家では年神に供える繭玉の木は梅で、そのほかの神様は樫にしている。梅の木には団子を十二個、樫の木には五個挿すことにしている。(小平市史)
(大澤)

わが家(所沢)でも 大神宮様 床の間 仏壇 恵比須大黒様 お釜様 屋敷神様(稲荷様) 井戸神様 蔵 に大神宮様には七つ 他の神様には五つづつ 樫の枝にさしてお供えしていました。
今は座敷の繭玉飾りだけで 神様にはお皿でお供えしています。
(田中)

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