●羽村市郷土博物館／東京都羽村市羽741
学習会「まゆ玉だんごを作ろう！」にカイコローグメンバーで参加。（2018年1月）
羽村市はかつて養蚕が盛んだったようだけど、今では見る影も無い。
でもこの繭玉を見て、「タイムスリップしたみたい！」と昔の記憶がよみがえった人も。
■「繭玉だんごのつくりかた」
ボウルに米粉（180g）を入れ、お湯（110cc）をゆっくり入れて、しゃもじで混ぜる。
（写真は2人分の分量）
この米粉は、地元羽村でとれた餅米。
お湯が冷めてきたら手でグリグリとこねる。
始めはパサパサしているが、次第にまとまってくる。
細長く伸ばして、しゃもじで3cmくらいの幅に切る。
丸めたり、繭の形にする。
蒸し器で25分くらい蒸す。
竹串を刺して串に粉がつかなければできあがり。
うちわであおいで団子を冷ますとテリが出て飾った時に綺麗。
左）ビフォー 右）アフター
「繭玉飾り」は、作物の豊作を祈る（予祝）飾りもの。
木の枝に餅や団子をつけ、かつては米の豊作を願ったもの。
餅を使う方が古制で、餅花などとも呼ばれる。
後世、養蚕が盛んになると、繭型に作った団子をつけて繭の収穫を願い、
「繭玉」（めーだま）と呼ばれるようになった。
繭玉団子とミカンを木の枝に刺して飾る。
木は「つげ」とか「梅」とか、地域によって違うけど、近くにあるもので。
生糸をかけるのが、ここの特徴のひとつ。
飾っている間に硬くなってしまうけど、後はお雑煮にしたり、「パリパリになったら油で揚げてあられにして食べる」のだとか。
保存建物である「旧下田家住宅」にも飾る。
幕末期の農家で、茅葺・入母屋造り（扠首構造）
土間に天井が張ってあったのは、養蚕のためかな。
でい（出入、出居）の間と呼ばれる、畳敷きの客間に飾り付け。
学芸員さんによると、
「16メーダマと呼ばれる大きな16個のまゆ玉を先に飾っておいて、
ミカンや小さい繭玉団子を加えていく」。
周辺の青梅や八王子、東村山でも16個だったようだ。
この基本の数は、地域差があっていろいろ。
群馬では、十六善神と馬鳴菩薩が祀られている寺があった。
この数の指定は、布教者の教義によるものだと思う。
ダルマと御膳を供える。
養蚕農家では、ダルマ飾りも「養蚕が当たりますように」という縁起物。
カイコの病気除けとも関係があると思う。
実際にやってみると、自然に帰しながら豊作を祈るという農業の循環を感じる。
こうして1年が始まるのだな、と実感できる正月行事でした。
■繭を使ったストラップづくり
団子を蒸している間にアトラクション。
桜の枝などを使って草木染された繭でつくる。
桜の枝も、花が咲く時期のものが、綺麗なピンクになるとか。
地域の正月飾りが展示してあった。
これは「神酒口（みきのくち）」という竹細工。
「けっこう高いので、紙でいいことにした」という話をどこかで聞いた（笑）
多摩川の河原では、どんど焼きの準備がされていた。
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翌日の河原での、どんど焼きの様子。
「どんど焼き」は、ワラや竹で作った小屋の周りに、正月のお飾りなどを積んで焼き、その火で餅や団子を焼いて食べ、一年間の無病息災を願う伝承行事。
焼く団子とは別に、お飾りの繭玉3個付きの枝（ツゲ）も売っていたようだ。（中森）
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この他、「繭玉作り」が体験できたり、展示が見られたりする施設はこちらをご参考に。
■羽村市郷土博物館の展示
旧下田家住宅とともに養蚕用具や生活用具1210点も国の文化財指定を受けていますが、郷土博物館に収蔵されている養蚕関係資料のうち141種8398点は、「都内に残る、当時の技術や方法がわかる貴重な一括資料」ということで、平成8年（1996）3月に東京都有形民俗文化財に指定されたそうです。
養蚕の村コーナー全体、養蚕の道具も展示されている。
「繭かき」に使うザルも豊作祈願の縁起物として門前市などで売られていた。
島田簇手織り具、二角式簇折り機。島田簇を作る
蚕室の展示
左）ホルマリンの瓶と消毒ポンプ。右）養蚕用コンロ
左）鑑別器。繭を光にかざしサナギの大きさでオス・メスを見分ける。
右）自動鑑別器。繭の重さの違いで雌雄を分ける。
旧下田家住宅。弘化4年（1847）建設、平面積29坪、広間型。
2階への上がり口（階段撤去）。下からのぞくと上は中2階（と教えてもらった）、そこから3階への小さい階段が見えました。
羽村（旧西多摩村）の養蚕業発展に大きく貢献した下田伊左衛門（成進社を設立）と指田茂十郎は、当時の羽村の凄い人ってことくらいは知ってたのですが、昨年地元の五日市鉄道のことをあらためて調べ直したときに、五日市鉄道設立の最初のきっかけである玉川上水通船から、甲武鉄道（中央線）、青梅鉄道（青梅線）設立までずっと名前が出てきてびっくりしたのでした。そのときに二人は養蚕家でもあったことを知ったものの、どういう養蚕家だったのかは今回初めて知りました。
（大澤）